シネマ△トライアングルがお贈りする「発掘!幻の映画」シリーズ、久しぶりの今回はクラタ・フミンド監督『殿様ホテル』。
戦中から俳優ブローカーとして知られ、後に新東宝の取締役撮影所長となる星野和平が設立した藝研(映画藝術研究所)の第一回作品で、当時星野のお抱えのトップスターだった原節子も特別出演。劇場上映は勿論のことソフト化やCS等の放映もない超レア作品につき、是非この機会をお見逃しなく!
※今回の上映プリントは経年のためフィルムの劣化が進んでおり、それに起因する映写トラブルによる上映の中断等がある可能性があります。また、欠落などにより上映時間が予定より短くなる可能性もございます。かろうじて現存する貴重なプリントでありますことをご考慮頂いた上、予めご了承頂きたくお願いいたします。
1949年 藝研株式会社製作 モノクロ スタンダード 93分 (16mm上映) 製作:井上正之 シナリオ・演出:クラタ・フミンド 演出補助:津田不二夫 撮影:會田吉男 音楽:飯田信夫 美術:北川恵笥 録音:亀山正二 照明:石川緑郎 出演:河津清三郎/井川邦子/眞山くみ子/藤原釜足/飯田蝶子/吉川満子/徳大寺伸/小林十九二/林寛/小杉義男/原節子
【あらすじ】 華族制度の廃止で平民となった“殿様”花小路はかつての封建的な生活を捨て、働くの人達の役立ちたいと、夫人朝子の猛反対を押し切って自邸を改造し「家庭旅館」を始めた。そこへやってきた兄の復員を待ち続ける娘千代も女中として加わり、旅館の営業は順調な滑り出しを見せたかと思われたが、やってくる客は連れ込み客やおめかけさん、はたまた女スリなど花小路の思惑とは違う客ばかり。そんな中、花小路は宿泊客の一人猫越から高価な宝石の売却の話を持ちかけられるが...。
【作品解説】 戦中から多くのスターたちのマネージメントを行い俳優ブローカーとして知られた星野和平が監督の熊谷久虎を代表に立て、同じく監督の倉田文人、森永健次郎、俳優の佐分利信らと設立した藝研株式会社の第一回作品で、撮影は労働争議が終結して間もない東宝撮影所で行われた。 シナリオ・演出は戦前日活出身で戦後は鰐淵晴子・原節子主演の『ノンちゃん雲に乗る』で知られる倉田文人(本作はクラタ・フミンド名義)だが、倉田のシナリオは2年前の1947年に既に雑誌に発表されており、東映の前身東横映画で映画化する企画もあったようだ。 キャストは星野のお抱えの俳優を中心に固められ、当時星野がマネージメントを務めていた俳優のトップである原節子も女スリ役で特別出演している。 また、原の実兄で撮影技師の會田吉男はこの作品からキャメラマンとして一本立ちした。