シネマ△トライアングルがお贈りする「発掘!幻の映画」シリーズ、今回は2010年に上映した日映株式会社製作、久松静児監督『怒りの孤島』をアンコール上映。
戦後間もない頃、瀬戸内の孤島で実際に起きた事件に材を採ったこの作品は、封切り当時には大きな反響を呼び、文部省推薦作として各地の学校でも上映され、多くの人に感銘を与えながらも、製作した日映が僅か二作品を製作しただけで解散してしまうなど諸事情でその後劇場で再映されることもなく今日に至り、また、今後ソフト化等も望めない作品として、幻の映画となっていたもの。 シネマ△トライアングルでは4年半前、2010年4月に脚本家水木洋子生誕百年記念としてこの作品を発掘上映、お陰様で大変な好評を頂き、また、上映終了後も多数の方々から再上映を望むリクエストを頂きました。 シネマ△トライアングルとしましても早々にリクエストにお応えすべく再上映の企画を予定しておりましたが、フィルムレンタル会社が前回の上映の後、プリントを処分してしまったという驚くべき事実が判明、やむなく再上映を断念せざるを得ませんでした。 しかし、その後も探求を続けていたところ、今回遂に別の16mmプリントの所在が突き止めました。 今回のプリントも前回同様経年のため退色が進んでおり、傷みもかなりありますが、原版の所在も不明な貴重な作品、是非この機会をお見逃しなく!
※今回の上映プリントは経年のため退色が進んでおります。またフィルムの劣化に起因する映写トラブルによる上映の中断等がある可能性があります。かろうじて現存する貴重なプリントでありますことをご考慮頂いた上、予めご了承頂きたくお願いいたします。
1958年 日映株式会社製作 松竹配給 カラー 日映スコープ (16mm上映) 製作:曽我正史 監督:久松静児 原作/脚本:水木洋子 撮影:木塚誠一 音楽:芥川也寸志 美術:平川透徹 録音:安恵重遠 照明:平田光治 出演:鈴木和夫/手塚茂夫/土屋靖雄/佐藤紘/織田正雄/岸旗江/二木てるみ/中村栄二/稲葉義男/岸輝子/御橋公/左卜全/原保美
【あらすじ】 瀬戸内海に浮かぶ孤島「愛島」、この島は鯛の一本釣りをする漁師の親方によって支配されている。漁の折り、船の操舵を担うのは舵子といわれる少年たちで、彼らは過酷な労働と虐待に暗い日々を送っていた。少年たちは、激しい労働に耐えられずついに島を脱出しようと計画する....。
【作品解説】 戦後間もない頃、瀬戸内の孤島で起きた児童虐待事件「舵子事件」を基に、水木洋子が執筆したNHKのラジオドラマ『舵子』(昭和29年放送)の映画化作品。 製作は大映の専務であった曽我正史が社長の永田雅一に離反し起こした日映株式会社で、監督には代表作となった『警察日記』以降、日活や東京映画で秀作や佳作を連発し、まさに油の乗っていた時期の久松静児があたっている。出演は織田政雄、岸旗江、岸輝子、左卜全、原保美といった独立プロ作品ではお馴染みの俳優のほか、久松作品には欠かせない子役二木てるみ、主役となる「舵子」にはこの映画のために集められた少年たちが起用されている。
【「舵子事件」とは】 昭和23年7月、山口県大島郡久賀町で窃盗未遂で保護された二人の少年の証言により明るみになった事件である。二人は瀬戸内の孤島「情島」で鯛の一本釣り漁の舵子(漁の最中に船を操舵する役目)として働いていたが、仕事の過酷さに耐え切れず島を脱走して来たと証言、事情聴取を進めると島では21年に舵子の少年が監禁されて死亡するという虐待事件があったことが判明する。さらに3年後の26年5月、今度は五人の少年たちが島を脱走、二度目の事件となる彼らの証言により、大きくマスコミに取り上げられ、「人身売買」「児童虐待」事件として世間を騒がす事になった。 ただし、この事件の扱いは「戦後民主主義」思想の格好の標的になった感もあり、背景にある孤島の島民の生活の過酷な実態といった事を全く無視し、また、島民に対する逆差別も生む事になったため、後年になって事実を見直す声もあがっている。。
【日映について】 戦前、振津嵐峡の名で千恵プロで監督や脚本を務めた後、日活京都第二撮影所所長を経て大映の専務となっていた曽我正史が社長の永田雅一に反発し、十数名の大映スタッフと共に起こした会社である。当初は京王電鉄などをバックにつけ7番目の映画会社としての設立を目論んでいたが、永田雅一の妨害に遭い頓挫、独立プロとして発足するも、第一作である『怒りの孤島』製作の時点で早くも資金難に陥り、第二作『悪徳』(佐分利信監督・主演)を製作した後解散となる。作品の配給は『怒りの孤島』を松竹、『悪徳』を大映が行った。余談になるが1958年に「日映曽我正史社長が『無鉄砲一代』のロケハンのため網走市を来訪」との記録があり、同年封切られた歌舞伎座映画製作の『無鉄砲一代』は元々日映の企画だった可能性も考えられる。 なお、ニュース映画の「日映」とは無関係。